息子が自閉症とわかり、絶望の時期はゆるやかに過ぎ、ふと思った。
「お嫁さんは多分無理だな、来たらラッキーだけど・・・。さてどうするかな!?」
前を向いた私が考えた、自立への第一歩は、即決「料理ができる男にならねば」でした。
昨今、障害の有無にかかわらず、料理ができる男の人の方が女性にモテると思う。
そんなことから始めた料理道、高校2年生頃から、夕食は息子が作ってくれるようにまでなりました。
「食べる」ことは基本だと思うから、食いしん坊の息子になってくれて本当によかった。
料理を教えるにあたって、最初に「味覚」の確認をしたように記憶しています。
小さなお皿に ①砂糖水=甘い ②塩水=しょっぱい ③酢水=すっぱい などを入れなめさせて、味と言葉の合致を確認しました。
自閉症の料理:①包丁と皮むき
最初は包丁を持たせることが怖かった。
でも包丁が使えなければ、先には進めない。
ハサミでも代用できるけど、私は使い慣れていないし、基本はやはり「包丁」。だからそこから教えたい。
早速、kids用の包丁を購入して、私の手伝いから。
固くないものを切るところから始めましたが、手を切ることもなく、包丁に慣れていきました。
小学校では皮むきにピーラーを使うと聞いて、ピーラーも購入しました。
ニンジンなどの皮むきはすぐにできます。
玉ねぎの皮むきは下の根っこをくり抜くやり方となど、丁寧に教えました。
にんじんや大根や玉ねぎをクリアしたら、いよいよ「じゃがいも」です。
私が考えた皮むきの最終目標は「包丁を使ったじゃがいもの皮むき」です。
私はピーラーよりも木製の皮引きの方が使い慣れていたので、この時点で皮をむく道具は3種類ありました。
1.包丁 2.ピーラー 3.皮引き
じゃがいもの皮をむくとき、子供に「どれでむいてもいいよ」と言ったところ、ピーラーでやり始めました。
でも大昔私も指を切ったことがあるからかもしれませんが、見ていて怖かったです。しかしここも上手にむきました。
ピーラーでむいても、芽の部分は残るので、包丁のあごを使って芽を取る方法を教えます。
ある日、「包丁でじゃがいもむいてみて」と、いよいよチャレンジさせてみました。
子供は「わかった」と言ってむき始めます。
私の頭の中では「うん、今なら病院やっているな。ちょっと切れても大丈夫」。
息をのんで注視しますが、いとも簡単にむいてみせました!
子供の力ってすごいと思いました。やらせてみるものですね。心配しずぎな自分を認識します。
客観的にほめられたことで一番うれしかったこと。
それは高校の職業実習で大手和食レストランに行った時のことです。
1週間ほどの実習の最終日には現場の上司から、評価を聞くことになっています。
そこで粋な料理長に言われたこと、それは「今まで何人か実習生を受け入れましたが、こんなに包丁が使える子は初めてです」
最高じゃありませんか?本当にうれしかったです。私がね。
まず、第一段階の包丁使いはクリアしたので、次は調理にチャレンジしていきます。
自閉症の料理:②火を使う
私は若い時に、一人暮らしのアパートを決める際にも「ガスコンロがあるか?」が1番といっていいほどの条件でした。
ワンルームのアパートは当時電熱線のある「電気コンロ」が主流となっていました。
あれじゃあ、炒め物なんてできないし、何より時間がかかってしまい、調理をするのにはすごいストレスを感じます。
なのでオール電化が流行っている今でも、ガスコンロにこだわっています。
火を使う時は、取っ手に手が当たってしまって調理中の鍋がひっくり返るとか、そんな心配があります。
最初は切った材料を子供に炒めてもらったり、私は片時も離れず「火の調理」を見守り、慣れさせました。
この時に教えたことは、「火をつけたまま、その場を離れてはいけない」事。
2人の間では「火の番」と呼び、「今、ちょっと温めているから火の番お願い!」と言って、だれか一人は火のそばを離れないようにしています。
これは今でも続いています。
フライパンでの調理中に、料理酒のアルコールに火がついてフランベのように燃えたこともありました。
空焚きや熱しすぎ、魚焼きグリルの発火、小さな失敗と学習を繰り返して、ガスコンロも使えるようになりました。
自閉症の料理:③味付けする
韓国ドラマで「宮廷女官チャングムの誓い」というのがありまして、今でも偶然チャンネルが合ってしまうとつい見てしまう、思い出深い番組です。
その中で「味を描く」というセリフが出てきます。
チャングムの内容とは異なると思いますが、広義な意味で私は息子に「味を描く」ことができるようになってほしいと願っています。
私が思う「味を描く」は「この材料とこの材料を合わせて、この調味料とこの調味料で味付けしたら、きっとこんな風に仕上がる」とか「あの人の好きなこの料理を少し工夫して作ったら、きっともっと喜んでくれるぞ」とか、根拠がある想像をする、というようなイメージです。
息子は「イメージ・想像する」が苦手です。実体験に基づくものしか想像が難しいのです。
しかし、お料理なら経験を積めば、記憶力のいい彼ですから実体験のパズル合わせで「描く」ことができるようになると信じています。
最初の味付けは、酒、みりん、しょうゆ、砂糖、塩、ほんだし、みそ の基本調味料からでした。
今では素材に合わせて ウェイパー、鶏がらスープ、ごま油、にんにく、しょうが、オイスターソース、・・・使いこなすようになりました。
でも最近気になるのは「香辛料」好きがエスカレートしていること。
柚子胡椒が大好きで、その他にも特に「辛味」の嗜好が強くなり、自分に取り分けたものにはいろいろ「香辛料」かけています。
やんわり、「濃い味ばっかり食べていると、料理人にはなれないぞー」とは伝えているんですけどね。
香辛料好きは私譲りですから、あまり強くもいえないのです。
学校にもっていくと、まわりからとても褒められ、本人も多分うれしかったと思います。
ほぼ毎日の記録は、本人にとってきつい日もあったと思います。でもやらせてよかったと今でも思います。
そのレシピのは色あせることなく、この先もいつか本人が思い出して手に取ってくれると思います。
自閉症の料理:④材料と献立を考える
中学時代に積み重ねたレシピづくりと経験を経て、(特別支援学校=)高校の時には、夕食のみそ汁などを作ってくれるようになっていました。
高校の時は2年生から調理のコースに変更し、パン作りなども経験し、家でもピザ生地などを今でも作ってくれます。
高校では、大根のかつらむきや千切り、などをみっちり教えてもらいました。
おかげで、夕食はとうとう息子が作ってくれるように!
献立は今でも朝食時や夕方ラインで相談して決めていますが、基本は「家にある材料で作る」こと。
冷蔵庫や冷凍庫にあるもので献立を決めます。
お肉が続いたらお魚、できれば副菜もほしいけど、実際に食べる副菜はサラダや納豆が多いです。
早目に帰宅する息子は、二人で決めたメニューを完成、もしくは仕込んでおいてくれます。
夕食の支度をしてから、ランニングや習いごとに行きます。
もちろんお米とぎと、炒りぬか作りまでやってくれます。
メインの料理に合わせて、和風or洋風or中華風 の汁物も作ってくれます。
おでんの時は、じゃがいもや大根の皮むきは息子の仕事、ゆで卵やこんにゃく類の下ごしらえから煮込みまでは私の仕事です。
カレーも下ごしらえはすべて息子がやってくれるので、私は下ごしらえ済みの肉や野菜を煮込み、ルゥを入れるだけです。
今は
息子:「夕飯何にする?」
私:「豚小間と白菜あるから、八宝菜お願い。あと家に何があったっけ?(考えさせてみます)」
息子:「きくらげと、うずらとニンジン。八宝菜の素がないからウェイパーと鶏がらスープで作るね!」
こんな調子です。最初は「Cook DoⓇ」みたいな料理の素を使っていましたが、いつしか自分で研究して素がなくても適当につくってくれるようになりました。
頼もしいです。我が家のシェフ!
夕食時には、まずは「おいしいね!」と必ず言います。そのあと、「次はもうちょっとこうした方がいいね」という事を自信をなくさないように気を付けて伝えます。
完全な失敗談です。味噌汁を何年にもわたって作ってくれていたのですが、ある日とうとう「味がうすい」「具が多すぎ」と思慮に欠けた言い方で伝えてしまいました。
それまで「得意料理は味噌汁です!」と人前でも言っていたのに、その日から息子は味噌汁は作ってくれなくなりました・・・。
プライドを傷つけてしまいました。本当にごめんね。いつの日か伝えたいのです。
自閉症の料理:⑤息子が作った料理
お休みの日に作ってくれるランチの例
ピザ①
ピザ②
ピザ③
この下にのばしてある「バジルソース」は彼が育てたバジルから作ったものです。
別のページでいつかご紹介します。本当においしいの!
ピザ④
パスタ①
パスタ②
まさかブログにのせる日が来るなんて思っていなかったから、単なる記録photoですが、今度からは見ている人が「おいしそうぉ~」って思ってくれるような写真を撮ります!頑張るぞ。
まとめ
私は食べることの大事さを教えるために、いろんなおいしい料理(外食や良い素材)を小さい頃から食べさせてきました。
これは心がけてきてよかったと思います。
中学校はお弁当持参でしたが、「育ち盛りだから」と2段重ねの特大弁当を持たせ、食べさせ過ぎて、中学生の頃には超肥満児になってしまいました。
かわいそうなことをしてしまったと後悔しましたが、ふとしたきっかけから息子はダイエットに目覚め、今では最高98.8㎏から-25㎏ほど痩せて現在もkeepしています。
美味しいものは大好き、食べることも好き、だからそのためにたくさん運動をする。これが彼の基本的な生活スタイル。
社会人になってからは、朝食もお弁当も自分で作っています。
お魚もきれいに食べ、食べ物を残すことはほぼなく、食べ物を大切にする心を持つ息子。いつまでもその気持ちを忘れずに生きていってほしい。
そうそう、息子と2人でよく話す夢は、「家のガレージを改造して、二人で昼は喫茶店、夜は居酒屋を開く事!」
本当に息子も目をキラキラさせて「いつやるの?」と聞いてきます。
もうちょっと待ってね。私が脱サラに成功したら、きっときっと夢をかなえよう!